感染症と抵抗力・免疫力のおはなし

新型コロナウイルスが世界的に猛威を奮っています。特に高齢者や基礎疾患を有する方は重症化するリスクが高いとの政府発表があり、ご心配な方も多いことと思います。

今回は感染症と病原体について解説するとともに、感染予防策として「抵抗力や免疫力を低下させない方法」などについてもご紹介していきます。

感染症と病原体

感染症は病原体(ウイルス、細菌、寄生虫など)が体内へ侵入し増殖することで発熱、下痢、呼吸困難などの症状を引き起こすことをいいます。

病原体が体に侵入しても発病する場合としない場合があるのは病原体の感染力と我々の抵抗力とのバランスで決まるといわれています。

さて下図は主な病原体の大きさを比較したものです。

たとえばウイルスの大きさはおおよそ0.0001mm(0.1µm)程度と非常に小さく、これはタバコの煙と同程度の大きさです。またマスクのイラストにもあるように、一般的な使い捨てマスクの繊維の隙間は0.005mm(5µm)程度なので、ウイルスがマスクを通過してしまう大きさです。しかしウイルスは飛沫に混じっていることが多いので、マスクが全く役立たないというわけではありません。なにより自分が気づかぬうちに感染していたら、周囲に広げないためにも装着することは大切です。

しかしマスクだけではやはり心元ありません。そこで治療薬やワクチンが期待されるわけですが、これらの開発は非常に難しく、時間もかかるといわれています。驚くことに以前に流行したSARS (重症急性呼吸器症候群)やMERS (中東呼吸器症候群)も未だに抗ウイルス薬がないとのこと。こんなことを聞くと可能な限り各自で予防策を講じることが大切ではないでしょうか。

物理的な感染予防策

この度の新型コロナウイルスについては厚労省や内閣府から「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針1」や「新型コロナウイルス感染症に備えて ~一人ひとりができる対策を知っておこう~2」などが発表されています。詳細をぜひお読みいただきたいと思いますが、手洗い、うがい、マスク、換気、人混みに行かないなど各自が気をつけることで感染リスクを下げることはできます。

※1 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html#houshin

※2 https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/coronavirus.html

抵抗力や免疫力を落とさない方法

もうひとつ各自できる感染対策があります。それは「抵抗力や免疫力を低下させないこと」です。これらが低下すると病原体に脆弱になり、感染リスクが高まってしまいます。

以下では各自でできる方法をいくつかご紹介いたします。

睡眠時間をしっかりとる

この度の感染症対策として内閣府からも十分な睡眠を取るようにとの発表がありました。

別の研究にはなりますが、睡眠時間が不足すると風邪ウイルスにかかりやすいという報告が既にあり、その研究でも示された7時間以上の睡眠をおすすめいたします。

可能な限り規則的な生活を

起床、食事、就寝時間のリズムが狂うと自律神経が乱れ、睡眠の質が落ちたり、食欲や気分にムラが生じやすくなります。また自律神経は免疫力とも密接な関わりがあるため可能な限り乱さないように心掛けましょう。

食事内容を考える

免疫機能を維持するためには良質なタンパク賃、ビタミン、ミネラルが特に必要です。特に高齢者は食事量が少ないため、必要な栄養素を摂取しにくいといわれています。なるべく栄養素が多く含まれる食品を選んで食べましょう。

また、免疫細胞の約7割は腸に集合しています。それゆえ腸を健全に保つことで免疫細胞の活動を支えることにつながります。

腸内を健全に保つには善玉菌を増やすことが必須です。それには乳酸菌が含まれているヨーグルトや味噌などの発酵食品がおすすめです。

また善玉菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖もよいでしょう。ちなみに食物繊維は野菜やキノコに、オリゴ糖は大豆、ゴボウ、アスパラガス、ニンニクなどに比較的多く含まれています。

更に注目したいのが、免疫細胞を活性化させ、しかも殺菌作用も有する食品がいくつかあります。

たとえば「ニンニク」。

ニンニクには強力な殺菌成分(アリシンやその他の硫化アリル類)が含まれています。昔から民間療法としてケガや病気の時に用いたという記録が残されています。さらに近代研究が進み、いくつかの種類の免疫細胞を活性化することが示唆されています。

もしニンニクの臭いが気になるという方は無臭化された健康食品などをお使いになるのもよいかと思います。

適度な運動を

適度な運動は抵抗力や免疫力を上げることが知られています。

病原体などの侵入者に対して即座に攻撃を行うのがNK細胞という免疫細胞なのですがこのNK細胞を活性化することが報告されています。

ストレスを溜めない・笑う

ストレスを溜めると免疫力が低下することが報告されています。一方で笑うことは脳へ刺激を送り、そこからNK細胞を活性化する指令が出ることが報告されています。面白いことに、たとえ作り笑いであっても効果がみられるといいます。

まだまだ不安な日々が続く中、あなた自身を守るためにも、できる限りの予防策を行い、時には微笑むことも大切ではないでしょうか。