ウイルス除菌スプレーPK2 開発ストーリー

業務用除菌剤「BV4」のヒットが起点

2020年、新型コロナウイルス感染症「COVID-19」の世界的パンデミックが発生。 時を同じくしてミリオン株式会社は「ウイルス除菌スプレーPK2(以下PK2)」を発売しました。 PK2は元々、業務用の抗ウイルス・抗菌製剤「BV4(Bird Virus 4)」(以下、BV4)から、派生した商品となります。

BV4が開発された起源は、2009年、鳥インフルエンザのパンデミック。多くのメーカーが躍起になり、除菌剤の商品開発を行っていた中、 BV4は「安心・安全」×「除菌効果」を両立した画期的な除菌剤として誕生しました。

除菌スプレーを使う子供

BV4はヤシの実(バームヤシ)を主原料としているため、肌に触れ、口に含んでも人体に悪影響を及ぼさず、13種のウイルスと7種の菌、5種の真菌を不活性化できる画期的な成分でした。

そのため、「BV4」の高い安全性に目をつけた理学系研究所が、資料の除菌・防御剤として採用。 東京大学の図書館やJRの食堂車などにも優れた業務用除菌剤として使われるようになっていったのです。

また、BV4は引火しにくく、保管が容易で、除菌したものの表面に滞留して効果が持続します。また、完全国産なので信頼性がある商品でした。 しかし残念ながら業務用では有名でも、一般消費者にはほとんど知られていませんでした。

図書館

業界を揺るがす倉庫火災事件

そのような中、2017年、A社の倉庫が4万5千ヘクタール延焼する大規模火災が発生。物流業界を震撼させる事件となりました。 大規模火災となった原因は法定数量以上の危険物・エタノール消毒液が保管されていたことでした。 この教訓から、多くの倉庫で引火性のあるエタノールの入った除菌スプレーや芳香剤等、保管制限と厳罰化が始まりました。 そのような中、倉庫を持つ、通販会社の一つであるミリオン株式会社、社長の浦田は、元々、業務用として業界評判の高かった食物由来成分のBV4の存在にビジネスチャンスを感じました。

「倉庫でアルコール除菌剤を保管できない時代、引火性がなく、食物成分由来成分で、かつ効果が実証されている安心・安全な除菌剤「BV4」のニーズが業界でも、 市場でも高まるのではないか?」そう考えた浦田は、さっそく商品開発に着手しました。

火災

独特の香りへの挑戦

浦田は、その日から数か月間、BV4を一般用商品として販売するため、お客様や様々な取引先へBV4を持って、使用感調査に奔走しました。 使用した感想の他、足りない要望を聞いたり、アンケート調査も何度か行いました。すると、なんと「香りが苦手」という意見が大多数上がってしまったのです。

BV4は食物由来成分である酢酸が、「お酢」のような独特な香りがするという特徴がありました。この香りは業務用であれば、機械塗布後、時間を置くため消失し、あまり香りが気にならないものでしたが、一般のお客様には、自分で直接塗布すると、少しの間手や周辺に匂いが残るので好き嫌いが明確に現れました。

アンケート調査を何度も実施

やっと探し当てたスペアミント

調査結果にショックを受けた浦田はその後、連日、開発スタッフと共に、香りのブレンドと選定に、汗を流しながら格闘しました。 ラベンダー、カモミール、バニラ、オレンジ、ジャスミン、ローズ・・・。 ありとあらゆる香りをブレンドし、試作品を数えきれないほど作り、何度も何度も検討をしたのですが、なかなか納得できる香りが見つかりません。 「もうだめだ・・・」あきらめかけたその時でした。 開発室の奥で「あっ、これならいいかもしれません!」というか香りを調合していたスタッフの声がしました。

スペアミントの香り

その時、スタッフの手にあったのは、ヨーロッパ産のスペアミントでした。スペアミントは古くからヨーロッパで愛されているハーブであり、大手メーカーのガムやキャンディーにも使われていることから、日本人にもなじみがあり、安心感のある、好まれる香りでした。かつ、BV4の酢酸臭を最もうまく打ち消すことができる香りだったのでした。特に決め手になったのは、除菌剤として手や口元に触れても一番、違和感がなかったことでした。

そしてとうとうこの日、一般用としてヨーロッパ産のスペアミントの香り採用が決定したのです。

この時すでに、浦田がアイデアを思いついてから2年の年月が過ぎ去っていました。

パンデミックに伴う世界的な容器不足

香りという難題をようやくクリアし、商品開発が終了しつつあった2020年2月、まるで運命に翻弄されるかのように、新型コロナウイルスの流行が始まったのです。

当時、業務用で市場拡大していたBV4は、世界で最も難しい米国AOAC基準をクリアし、日本でも北里大学での試験などで効果を実証するデータが出ていました。 特に除菌困難なノロウイルスMERS・SARSコロナウイルスにも結果が実証されていたことから、今回のパンデミックにも除菌効果が期待できるとして、 商品名を「PK2/パンデミック・ノックアウト(Pandemic Knockout)」と決め満を持して発売することになりました。

しかし、商品開発の最後の段階となる、容器への溶剤詰めのタイミングで、なんと世界的なパンデミックの影響で、容器不足となり、通常ルートでは容器が調達困難になったのです。
そのため、競合他社の除菌剤開発も全てストップし、市場には除菌スプレーの姿が消えました。

容器不足に悩む

「絶対あきらめない」一心で探し当てた一筋の光

もうここまでかー。そう社内の誰もがあきらめムードになっていた時、浦田はPK2の開発を決して最後まであきらめませんでした。考えあぐね、前職であった総合商社での海外調達経験から、ドイツから特別なルートでボトルを仕入れることに成功したのです。
PK2にようやく一筋の明るい光が見えてきた瞬間でした。

そしてついに、奇跡的なボトル調達により、2020年2月下旬、ミリオン株式会社の新商品、一般向け除菌スプレー、PK2を発売することができたのです。
発売後は、世界的に除菌スプレーが不足していたことから、電話注文が殺到。電話がパンクするほどの事態となりました。

電話注文を受けるオペレーター

最後に、浦田はPK2についてこう語っています。

「コロナ禍と呼ばれる時期が過ぎても、人々からウイルスに対する恐怖や警戒心が薄れるのはずっと先になるでしょう。数ある商品の中でPK2を選んでいただいたお客様に、お届けするのは“安心”そのものです。だからこそPK2はこの先もお客様の生活に寄り添い、“安心”を提供することが一番の役割なのです。」

何があっても開発を諦めなかった浦田。現在、除菌スプレーは安定共有されている時代となりましたが、「安心・安全」と効果を両立するPK2は市場差別化した商品として、さらにお客様に長く愛される商品になっていくことを祈っています。